Dプラス スタッフblog

「医師の生涯のパートナー」を目指します

*

ブラックジャック

   

少し前、40歳の外科医の先生と面談も兼ねてゆっくり食事をする機会がありました。

「先生、どうして医者になられたのですか?」と問いますと、

「母が医者になりたかったみたいで、子供のころ手塚治虫の”ブラックジャック”が
手元にあって、それを読んだ時これだ!と思ってしまったのですよ。」とのこと。

その先生(以後Y先生)は、外科医は最後の10年間を後進の為に使わないといけない、
と仰った。研修医のころ、ベテランの先生が眼が悪くて、Y君、そこが見えないけれ
どもどうなっている?どこを切ったらいいと思う?と問いかけられ、情けなかった
けれども本当に何も分からないので、分かりません、と泣き声で答えたそうです。
ベテランの先生はスキルも知識も十分に持ち合わせているのに、肝心の技術伝達の
現場で、眼が衰えていたばかりに指導が行き届かなかったようです。Y先生いわく、
自分の実力が100%出せる環境において、後進の指導にあたらないといけない、
そうしないと技術の継承及び発展は無いのではないか?実力が80%しか出せない
状況になって後進の指導をするなら、技術は8掛けの割合で将来に向けて先細って
ゆく、つまり医療が進歩しないのではないか?なので自分は、実力が保たれると
想定される最後の10年間を後進の為に使いたい。もし、指導をした後輩達が自分
を追い抜いて行ってくれるなら、それがきっと自分の喜びになると思う、と自分
自身に納得するようにニッコリされた。

あと、医者もその他の職種もみんな同じだと思う、との大胆な言葉もあった。

手術はするけれども、それで治るのは患者の生命力のお陰、生きていなければ
治るも治らないもない、治すのは患者自身の生命力に他ならない。ブラック
ジャックは、病気だけを治しているのでは無く、患者の人生全体を手助けして
いる。自分も、医療を通して患者の人生を助けている、と思っている。どんな
職種であっても、その職種を通して、その人の人生を手助けしているが、治す
(助かる)のはその人自身の力に他ならない。そういう意味に置いて、職種に
違いはない、と仰った。

医師でもあった手塚治虫はこう言っている。

「ブラック・ジャックは医療技術の紹介のために描いたのではなく、
 医師は患者に延命治療を行なうことが使命なのか、患者を延命させる
 ことでその患者を幸福にできるのか、などという医師のジレンマを描いた」

 - 未分類