“学ぶ”ということ
関東の赤十字病院の院長先生とお話しした際、「学習の3要素」という言葉を教え
て頂きました。
・知識の習得
・技術の習得
・姿勢の習得(又は習慣の習得)
特に大事なのは、3の姿勢の習得と仰いました。
医師になってから、最初の2年位が勝負とのことで、常に患者のところに足を運ん
でいるか?コメディカルとコミュニケーションを取っているか?誰にでもちゃんと
挨拶をしているか?そういうことは、最初の2年で身に付けないといけない、との
ことでした。院長曰く、3年後から出来てきた人を見た事が無い。逆に、偉くなれば
なるほど、挨拶も、コミュニケーション力も、患者に足を運ぶことも減ってくる。
なので、最初の2年で「姿勢の習得」が出来るかどうかが大切だと思います、との
ことでした。
その他、ヒポクラテスの誓いと医の倫理、ノブレス・オブリージュ等の言葉の意味
するところを、日常の仕事の中でどのように実践するかについての示唆に富んだ話
も頂きました。
ノブレス・オブリージュという言葉は、直訳すると「高貴さには義務がともなう」
という意味ですが、財力、権力、社会的地位を持つ者には、それなりの責任が伴う
ということで、医師はまさに、ノブレス・オブリージュを体現しなければならない、
ということ、そして、自己抑制、自己犠牲、という言葉もありました。
日頃から気さくに接して頂いている院長先生から、何時になく医師の矜持に関わる
話を伺って、そういう思想のもとで、常日頃から職員や私のような業者にもいつも
丁寧に接して下さっていらっしゃたのだな、と胸が熱くなりました。
“学ぶ”に関してもう一つ、日本で最高レベルの心臓血管外科医と言われる先生は
下を育てていない、というお話をしばしば幾つかの筋から伺っていました。
ある時、その心臓血管外科医のオペで麻酔をかけていらっしゃった先生とゆっくり
お話しする機会があり、その話題に触れた際、昔の外科の先生方は技術習得の為に
身を乗り出して、その実際の動き、呼吸、タイミングを習得していたのに、最近の
先生方はモニターばかり見ていて、近くにも寄らない、言わないとやらないし、
教えられるまで待っているだけのようだ、時代は変わっているね、とのことでした。
そして、最高レベルの先生について、その先生はご自身がたたき上げで自ら習得
したスキルですっくと立っているから、教えようと思ってもいないと思う、盗んで
成長してみなさい、というところだと思うよ、と。
学ぶということは、両者の関係なので、白黒の答えが出しにくいところがあるかも
知れませんが、私はこう思います。
どちらかが本気でなければならない、と。
教える方が本気なら、学ぶ方に火が点くことがあります、学ぶ方が本気なら教える
方もそれに応えて本気になります。
それは両者の関係ですから、運命というのか、出会いなのでしょうか?
タイトルの写真は、昨年11月に開催された高知県での臨床麻酔学会に参画した際、
由緒ある朝倉神社に参拝したのですが、その境内の木です。清々しい光景でした。